前回は、飲食店がメニューなどをパソコンで自作する場合のポイントについて簡単に述べた。

メニューのように出来上がりの部数が少なくても良いものは、家庭用のプリンターで印刷するだけで充分に実用的な印刷物が仕上がる。だが配布チラシやリーフレット(簡単な1枚もののパンフレット)のように数百枚~数千枚という単位で大量に印刷する必要がある場合は、家庭用プリンターで印刷するのでは時間もコストもかかりすぎる。こうした印刷物は、やはり印刷所に入稿して印刷してもらわなければならない。

かつては、素人が印刷所に入稿するということはとても難しい作業だったが、現在ではある程度パソコンが使えれば、こうした印刷物の版下(印刷所に入稿するためのデータ)をパソコンで作成して持ち込むことは、それほど困難なことではなくなった。プロのデザイナーが制作したものではなくても、対応してくれる印刷業者も多い。

印刷に使用するデータで最も多く使われるのは、アドビ社の「イラストレータ」と呼ばれるアプリケーションソフトで作ったデータだ。このソフトはプロのデザイナーも使用しており、非常にレベルの高いデザインを制作することが出来るが、パソコンに詳しくない素人が簡単に使いこなせるようなソフトではない。このソフトが使えるような人には、そもそもこんな解説自体が無意味だろうから詳しい説明は割愛するが、従来は、印刷所の多くがパソコンのデータによる入稿に関して、この「イラストレータ」のデータを用いることを前提としていたため、素人がパソコンで印刷用の版下をつくることは難しかった。だが現在ではそうした状況が変化しており、多くの人がパソコンで文書を作る場合に使用している「ワード」や「エクセル」といった事務処理用のアプリケーションソフトのデータを、「PDF」と呼ばれる特殊なファイルに変換することで印刷を行うことが可能になって来たのだ。このPDFファイルに変換するためのソフトは、パソコンショップでも簡単に購入できるが、文書に使用するフォント(書体)を埋め込むことができる機能を持ったソフトを選ぶのがポイントとなる。

正確に言うと、こうした印刷は、印刷と言うよりも業務用のプリンターを使ったプリントアウトなのだが、出来上がりはひと昔前の簡易印刷と呼ばれるものよりも良いくらいだ。こうした方法による印刷物の制作には版下の制作費用がかからない上に、メールで入稿することもできるので、インターネットで安い印刷会社を選んで発注することが可能になった。このようにパソコンを使って自分でチラシなどをデザインすることのメリットとは、毎回の発注ごとに前回のデザインを流用して必要な修正を加え、新しいチラシを作っても費用が安く上がることである。従来の印刷物の発注には、チラシの内容を少しでも変えるごとに新しい版下を制作しなければならなかったが、パソコンによるこうした印刷方法ならそうした費用を削減することが出来る。

ただし、この方法は厳密に正確なデザインを求められるような印刷物には向かない。あくまでも販促用チラシのように大量の印刷物をできるだけ安く作りたい場合に有効な手法だと考えて欲しい。

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