[外食レストラン新聞(日本食糧新聞社)] (2010/2/01)

いま、インターネット上で最も活発な動きを見せているのが「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」と呼ばれるサービスだ。「SNS」という言葉は、すでにビジネス系から出会い系まで、さまざまな分野で使われているから、読者の多くもご存じだろう。「SNS」は、文字通り「インターネット上で人脈(ネットワーク)を広げていくこと」を目的としたサービスである。

日本では「SNS」と言えば「ミクシィ(mixi)」が有名だが、世界最大の「SNS」は米国の「マイスペース(MySpace)」である。「マイスペース」の米国でのスタートは2003年、日本版は2007年から正式にサービスを開始した。「ミクシィ」のように、すでに登録している会員の紹介がなければ参加できない「招待制」ではなく、誰でも自由に会員登録できるシステムで、2006年には全世界での登録会員数が1億人を突破している。音楽ファイルを公開できる仕組みがあるため、有名無名を含む多くのミュージシャンが登録したことで爆発的に人気を呼び、毎年、世界中で最も人気のあるサイトのベスト5に入るほどの有名サイトだ。

この「SNS」サービスを提供するサイトの中で、最近急速に会員数を増やしてきたのが「フェイスブック(Facebook)」である。「フェイスブック」は、2004年に大学生のみを対象としたサービスとしてスタートし、2006年に一般向けのサービスを開始したが、2009年12月の発表では、すでに世界中で約3億5千万人が会員登録しているという。

この「フェイスブック」の最大の特徴は、原則として会員情報をすべてオープンにしていること。つまり設定に応じて、匿名ではなく実名で自分のプロフィルを公開し、自分と自分の家族や知人たちとの関係、その人たちとの会話など、誰もが読むことのできるオープンな情報として掲載することができるのだ。さすがに、あまりにも会員数が増えたため、昨年、一部の仕様を変更してプライバシー設定をより厳密に設定できるようにシステムを変更したが、それでも、「SNS」をリアルの社会と同様にとらえ、原則として実名での情報公開という方針は変わっていない。この「フェイスブック」もまた、前回紹介した「ツイッター」と同様に、オバマ大統領が選挙戦で活用したことが知られている。「フェイスブック」の若き共同創立者のひとりがオバマ陣営に参加し、膨大な個人献金を集めた多くの支援者の獲得にひと役買ったのだ。当時のある記事によれば、オバマ氏は「フェイスブック」を使って2週間で40万人という「フレンド」(「フェイスブック」での「人脈」を指す)を集めたと言われている。

さて、こうしたインターネットの急激な変化の中、後5年もすると、生まれたときすでにインターネットが存在していたという世代が日本でも成人を迎える。今後10年以内に、そうした世代が社会人として活動を始める頃には、もしかすると、社会における「ネットワーク」とか「情報の流通」といった概念が根底から変わってしまうかも知れないのだ。言い換えれば、「広告」とか「販促」とか「口コミ」といったことの意味が、これまでとはまるで違ってしまう可能性があるということである。

そうなったとき、果たして皆さんは、そうした社会でのビジネスについていくことができるだろうか。

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