[外食レストラン新聞(日本食糧新聞社)] (2010/06/01)

「クチコミサイト」という言葉をご存じだろうか。飲食業界では「食べログ」のことだと言えば、誰もが「知っている」と頷くに違いない。「クチコミサイト」とは、通常の情報サイトのようにサイトの運営側がコンテンツ(記事)を制作するのではなく、主に一般ユーザーの投稿を集めたコミュニティ型の情報サイトのことだ。その商品やサービスを利用したユーザーの評価を参考にするため、非常に多くの人々が訪れるので、そうした人たちに向けた広告収入などにより成り立っている。

「クチコミサイト」としては「食べログ」は比較的新しく、商品の価格情報を掲載している「価格コム」や、化粧品関連の情報を掲載する「アットコスメ」など、すでに古くから多くのユーザーを集める著名なサイトがいくつかある。また、クチコミサイトではないが、「楽天市場」や「アマゾン」「ヤフー」といったポータルサイトも、「商品レビュー」などを通じてユーザーの評価情報を掲載することで、クチコミサイトに近い機能を付け加え、顧客の購買を促している。

こうした一般ユーザーの「クチコミ」による評価は、インターネット上では非常に有効なことがすでに良く知られており、今後もこうしたサイトは増えていくだろうと予測されている。「食べログ」のようなクチコミサイトの特徴は、顧客が「良い」と認めてくれれば、店側が販促のために努力しなくても、大きな販促効果が見込めるという点にある。自分の探している分野で良い評価が多く書き込まれている店を見つけたら、一度行ってみたくなる。行ってみて満足すれば、自分も良い評価を投稿する。それを見た別の人間がまた同じ行動を取る。というように、まさに「クチコミ」の効果がそのまま発揮されるのだ。しかもインターネット上では、そのスピードと広がりは現実のクチコミをはるかに超えている。評価の高い店はさらにお客を増やすことになり、アッという間に繁盛店になることもあり得る。何のコストも手間もかからない販促ということになり、すでに、こうしたクチコミサイトを使った販促という、新しい販促パターンが生まれつつある。

しかし、クチコミサイトに掲載されているのは、あくまで利用者の記憶などに基づいた情報であり、客単価など店側が把握している実際のデータとは異なる場合がある。あるいは、その日たまたま発生してしまったミスを投稿コメントで大きく採り上げられることもあり、「いつもじゃないんだ」と反論したくなる場合もあるだろう。だが、店側からの反論はルール違反なだけではなく、むしろかえって店側の印象を悪くする可能性がある。店の雰囲気や価格に対する評価は、利用者がそのように感じているアンケートのような情報だと受け止め、ミスは素直に反省し、二度と起こさないように心がけるしかない。

また、こうしたクチコミサイトを販促に利用する場合に、決してやってはいけないことがある。それは、店側によるクチコミ投稿の「自作自演」だ。お客のふりをして、口コミサイトに自店の良い評価を書き込む「自作自演」投稿や、事実と違う情報の掲載は決して行ってはいけない。ネット上では、しばしばそうした行為が発覚して話題になっている。生半可にインターネットを理解したつもりになっているユーザーが犯しやすい過ちだが、ネットのユーザー数は現実社会では想像できないくらい多いので、思わぬところからバレてしまう可能性はかなり高い。

現実の世界同様、いやそれ以上に、インターネット上でのクチコミは恐ろしいのである。

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