[外食レストラン新聞(日本食糧新聞社)] (2008/03/01)

その昔、テレビや映画のSF物語で、登場人物たちが小型の無線通信機で連絡を取り合うのを見て憧れた世代の人も多いと思う。トランシーバーが子どもたちに人気の玩具だった時代もあった。携帯電話を持っていない人間が奇異の目で見られる現代では想像も出来ない頃のことだ。

現在の携帯電話の普及の背景には無線通信技術の進歩がある。1980年代の後半、家庭用の固定電話機のコードレス化が急速に広まるとともに、携帯電話のサービスが開始され、90年代以降には、加速度的に携帯電話が普及したという経緯はご存じだろう。つまり、今の20歳未満ぐらいの世代にとっては、電話というのはケーブルのない無線方式のものが当たり前ということになるわけだ。

こうした携帯電話の普及と同時に、パソコンなどによるインターネットへの接続の仕組みも無線化しつつある。パソコンを使う人ならば「無線LAN」という言葉を聞いたことがあるはずだ。無線LANとは、複数のパソコンをつなぐLAN(ローカル・エリア・ネットワークの略)という仕組みを、ケーブルではなく無線で接続するシステムのことを指す。

本来、LAN というのはケーブルで接続可能な同じ建造物内のネットワークを指すものだが、無線LANの登場によって、電波が届けば建物の外であっても、あるいはパソコンをあちこちに移動させても、ネットワークに接続できる環境を作り上げることが出来るようになった。つまり、インターネットに接続可能なネットワークを無線LANでつなげば、その無線が通じる範囲内ではインターネットへ接続したパソコンを自由に移動させることが可能になるということだ。すでに家庭用の無線 LANシステムはさほど高くない金額で多数販売されているから、個人で導入している読者も多いと思う。ノートブックパソコンには無線LANの送受信機が組み込まれたものも増えてきているし、カード式などの無線LANアダプターを購入すれば普通のパソコンでもすぐに無線LANが使えるようになる。

無線が届けば家の外でも使えるということは、隣の家からも使えてしまうということになるが、それはパスワードを設定して、関係のない他人のパソコンは接続できないようにすることが可能だ。電波で接続するネットワークだから、同時に複数のパソコンを接続することも簡単に出来る。

そこで、この無線LANをあなたの店の顧客サービスや販促活動に利用してはどうだろうか。店内に無線LANのシステムを設置し、来店したお客に対して店内で自由にインターネットにつなげるサービスを提供するのだ。光ケーブルなどのブロードバンド回線を契約する必要はあるが、あとは家庭用の無線LAN機器と設定用のパソコンを購入するぐらいでさほど大きな投資は必要ない。立地によっては外出先でパソコンを使いたい人を呼び込む集客販促にもなるし、常連客向けの顧客サービスとしても使える。早朝や深夜、アイドルタイムなど客数が少ない時間帯の限定サービスとしても良いだろう。

こうしたサービスを通じて、会員制にすることで固定客化を図る、あるいはインターネットに強い店として特徴を打ち出す、さらにインターネット関連のサービス(メールマガジンなど)との連携を図るなど、顧客を囲い込む営業戦略を展開することも可能になるはずだ。

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